2012年4月2日月曜日

防衛産業、撤退相次ぐ

防衛費が抑制され自衛隊装備品の発注が減るなかで、防衛産業が苦境にあえいでいる。戦闘機関連では03年度以降、燃料タンクやタイヤなどの下請け20社が防衛部門から撤退中か既に撤退。

戦車など陸上戦闘車関連では13社が倒産、35社が廃業や撤退したことが防衛省のまとめでわかった。「防衛生産・技術基盤が崩壊しかねない」との危機感が生産現場で高まっている。

装備品の仕事だけで成り立っている国内の防衛産業はほとんどない。景気動向に応じて民間と防衛の両方の仕事のバランスを取るところが大半だ。防衛部門の苦境が、日本経済全体に悪影響を与える可能性も含んでいる。

政府は04年に「防衛計画の大綱」を見直し、戦闘機や戦車、護衛艦などの保有数を削減した。防衛費もここ7年連続で減少。そこに装備品のハイテク化に伴う単価の高騰が追い打ちをかけ、発注数量が落ち込んでいる。主要装備品の購入にあてる正面装備費は冷戦が終わった90年度の約1兆700億円から、09年度は6850億円と3割強減だ。

例えば戦闘機。国内での生産は戦後、途切れることなく続いてきた。しかし保有数が300機から260機に削減。老朽化したF4の後継を選ぶ次期戦闘機(FX)選定の混迷もあって、F2の最終号機が11年に完成した後、国内生産に初めて「空白」が生じるのが確実だ。空白期に生産ラインや技術者をどう維持し、乗り切るかが大きな課題だ。

民間部門が大きい大手に比べ、下請け各社は防衛事業への依存度が高く、実情はより厳しい。また04年の大綱見直しで保有数が大幅減になった戦車や火砲のほか、発注数が少ない上に主要メーカーが多い艦艇の関連企業も苦しい。

事態の深刻さを受け、防衛省も動き出した。戦闘機について6月、「生産基盤の在り方に関する懇談会」を設置。民間有識者を交え実態調査に着手した。