2012年6月4日月曜日

賠償請求権は消滅していない

1978年に東京都足立区立小の女性教諭・石川千佳子さん(当時29歳)を殺害して自宅の床下に埋め、殺人罪の時効成立後の2004年に自首した元警備員の男(73)に遺族が損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が28日、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)であった。

同小法廷は、被害者の賠償請求権が20年で消滅すると規定した民法の「除斥期間」を適用せず、男の上告を棄却した。男の殺害行為に関する賠償責任を認め、計約4255万円の支払いを命じた2審・東京高裁判決が確定した。原告代理人によると、支払額は、殺害時からの遅延損害金を含め1億円を超える。

通常、除斥期間の規定は被害者の事情に関係なく一律に適用される。最高裁がこれを適用しない例外を認めたのは98年の予防接種禍訴訟の判決に続き2度目。

判決によると、男は78年8月、小学校の校舎内で石川さんの首を絞めて殺害。自宅の床下に遺体を埋めて隠したが、04年8月に警察に自首した。遺族は05年4月に計約1億8600万円の賠償を求めて提訴。上告審では、殺害から提訴まで27年かかった事件に、除斥期間を適用するかどうかが争点となった。

〈1〉加害者が被害者の死を知られないような状況をわざわざ作りだした〈2〉そのために相続人(遺族)が犯行を知らないまま20年間が経過したという場合に、除斥期間を適用すれば、「相続人が一切権利行使ができない原因を作った加害者が賠償義務を免れることになり、著しく正義・公平の理念に反する」との判断を示した。

そのうえで、「相続人が確定した時から6か月間は被相続人の持っていた損害賠償請求権は消滅しない」とした民法の規定を準用。遺体が石川さんと確認され、遺族が相続人と確定した04年12月から約4か月後に提訴していることから、賠償請求権は消滅していないと結論づけた。

1審・東京地裁判決は除斥期間を適用して殺害行為の賠償責任を認めず、遺体の隠蔽(いんぺい)行為のみ責任を認め、330万円の支払いを命じたが、2審は殺害行為の責任まで認めた。