2016年1月21日木曜日

老人保健制度の仕組み

高齢者の加入割合には、健康保険制度間で大きな違いがあります。被用者保険は働いている人が中心ですから、当然高齢者の加入割合は低くなります。その分、退職者などを国保は受け入れて、高齢者比率は高くなってしまいます。これは、保険者の責任に帰することのできない問題です。

国民すべてに責任が生じます。したがって、高齢者の医療費を、その高齢者の加入割合に関係なく、公平に分担してもらおう、というのは国民の連帯意識に基づく当然の措置といえるでしょう。これが、老人保健法で規定されている「老人保健拠出金」の基本的考え方です。仮に、政管健保や健保組合が拠出金負担に耐えきれず、負担を止めたならば、国保にも負担能力はなく、結局税金で医療費をまかなうほかなくなります。国民の税負担が増大します。税か保険か、の負担形式が変わるだけです。

老人保健制度には、七十歳以上の人と六十五歳以上で寝たきりの人が加入します。老人保健制度には、保健という名がついているように、四十歳からの保健事業も含まれています。四十歳からは体力的にも衰え、成人病にもなりやすい、ということから健康を保つために行われている事業です。五年ごとの健康診査や健康手帳の交付が行われています。

健康保険法で定める診察等の医療の給付に加えて、老人保健施設療養費の支給と老人訪問看護療養費の支給が盛り込まれています。リハビリも給付対象に含まれています。疾病や老化等により身体の機能が低下している四十歳以上の人が対象です。理学療法士や作業療法士などによる歩行等の基本動作訓練、食事等の日常生活動作訓練など機能の維持、回復のための訓練を行います。

従来、老人保健法による医療は定額の一部負担で受けることができました。通院の場合、通院一回当たり五百三十円(月五回目からは無料)、これに薬剤費の一部負担が加わります(一九九九年七月から徴収停止、国が肩代わり)。入院の場合、一口につき千二百円です。健康保険組合など多額の老人保健拠出金を出しているところからは、このような低額の負担金が適切なのか、疑問の声があがっていました。