2015年10月19日月曜日

介護費用の急増と介護保険構想

所得保障としての年金保険、医療保険のいずれをみても。その条件は脆弱である。そのうえに、介護を必要とする高齢者の増加も避けられそうにない。厚生省の推計では、寝たきり・痴呆・虚弱症状にあって介護を必要とする高齢者は、九三年に二〇〇万人であったが、これが二〇〇〇年に二八〇万人、二〇一〇年に三九〇万人、二〇二五年に五二〇万人に増加するとされている。

一九九三年度において、老人医療費のうち介護の色彩の濃い部分が、約八〇〇〇億円ある。これとは別に、老人福祉サービスとして施設サービスと在宅サービスに一兆五〇〇〇億円、家族による介護をヘルパーの単価をもとに換算すると二〇〇〇億円。高齢者の介護に、総計二兆五〇〇〇億円の費用がかかっている。これが二〇〇〇年には、老人医療のうち介護の色彩の強い部分が二兆一〇〇〇億円、老人福祉サービスの公的負担部分が二兆二〇〇〇億円、家族による介護費用をヘルパー単価に置き換えたとして三兆四〇〇〇億円となり、総計七兆七〇〇〇億円の費用を要すると推計されている。

特別養護老人ホームの整備やホームヘルパーの増員をはかる「新ゴールドープラン」(新・高齢者保健福祉推進一〇ヵ年戦略)が計画通りに進行しても、二〇〇〇年には、ちょうど家族による介護費用部分が不足する。だが、計算上はそうであっても、すでにみたように老人保健医療を国保で支えられるのか。また既存の債務を累積させている予算構造を前提にした時、「新ゴールドープラン」に必要な財源を投下できるだろうか。そして、財源不足部分を家庭内介護にゆだねてょいのだろうか。

このような状況下で、急速に費用負担制度として浮上しているのが、公的介護保険制度である。基本的な考え方は、特別養護老人ホームの介護費用やホームヘルパーの費用、老人病院の介護的色彩の濃い部分の費用などを、若年層から高齢者までを被保険者とする介護保険を創設して、そこから支払おうとするものである。九四年コー月より厚生省の研究会や老人保健福祉審議会、さらに社会保障制度審議会などの報告があいついでいるが、九七年度からの導入をいうわりには、構想のひとり歩きが目立っており、制度の内容が詰められていない。

だいたいが、介護保険の給付対象をどのようなサービスとするのか。医療保険の場合には、治療の必要性と治療内容は医師によって認定されている。だが介護保険では、どのような機関が受給者と保険給付サービスの内容を認定するのか。介護保険料を何歳からいくら支払うのか。それは介護保険でカバーされるサービスと密接に関係するが、具体的額が示されているわけではない。