2015年7月20日月曜日

成田と羽田のすみ分け

日航の再建はスタートに戻った。本当に政府が難しい再建をやりきれるのか、それとも過剰な負担を国民に押し付ける結果になるのか注目していかなければならない。そして問題を日本航空という一企業の経営問題だけでなく、より大きな日本の航空のあり方に広げて見る必要がある。羽田空港の国際化が大きな注目を集め、いろいろな議論が起こっている。安倍政権のもとで行われたアジアーゲートウェイ戦略会議では、今行われているような論議はすべて提起した。その座長であった者としては、数年遅れでこうした議論の盛り上がりが起きてきたことには、少し複雑な心境である。ただ、こうした議論が盛り上がって日本の空が少しでもよくなることは喜ばしいことだ。

成田と羽田のすみ分けにはいろいろな論点があるが、今回は国際空港の24時間利用という点について論じてみたい。成田空港は夜間から早朝にかけての発着ができない。そのため、夜10時ごろに最終便が出てから次の便が出るのは朝の8時以降になってしまう。これは国際空港としては致命的な弱点である。ちなみに、シンガポールやドバイの空港では、この夜間から早朝にかけて100機以上の航空機が飛び立つようだ。ハブの機能を発揮するためには、夜間から早朝の発着も重要な意味を持っているのだ。羽田空港の一つの強みは、夜間から早朝の発着が可能であるということだ。海外出張が多いビジネスマンなら、この時間帯の発着を利用した新たなサービスがいくつか思い浮かぶはずだ。私が思いついた二つの例をあげてみよう。

成田空港を夜10時ごろに出て、パリに朝4時過ぎに着く航空便がある。昼間日本で仕事を終わらせ、現地で朝から仕事をする必要のあるビジネスマンにとっては便利な便である。現地でフルに観光したいツアー客にとっても、朝から現地で活動できるというのは魅力的であるようだ。ただ、朝4時に着くというのはいかにも早すぎる。空港で夜明けを待つことになる。もし羽田空港を夜の12時に出る欧州線を組めれば、欧州の主要都市に朝6時ごろに着くことができる。このような欧州便なら、地方の方も夕方まで地元にいて、最終便で羽田空港に来て、余裕を持って欧州に飛ぶことができる。成田空港を利用するよりはずっと時間を短縮できることになる。

もう一つの例としてアジア大洋州便がある。朝の7時前後の成田空港は東南アジアやオーストラリアからの便の到着ラッシュである。タイやマレーシアの空港では、朝7時ごろ成田に到着するため、夜の19時近くまで空港で待機させられる。6時よりも前に成田に到着できないからだ。しかも朝の成田空港に到着する便のラッシュの中で少しでもあとのほうに回されると、空港を出るころには8時を回っている。この時間では都心に向かう通勤ラッシュに巻き込まれてしまう。

もし羽田空港に朝の5時から6時台に到着するような便を組めれば、現地を夜9時から10時という時間に出ることができる。空港で時間を潰さなくてもよい。また、朝のこの時間に到着すれば、都心へのラッシュを避けることができる。地方の方は、羽田発の始発に乗ることができるので、午前中には地元に帰ることかできる。羽田を利用した夜間早朝の発着の可能性に大いに期待したい。