2015年5月23日土曜日

戦線縮小と提携

軽快でアクロバティックな走りをみせたジェミニのCMでおなじみの「いすゞ」は、九二年末に乗用車部門からの撤退を発表した。もともと日本で最大のディーゼルエンジンーメーカーであり、トラックを得意としてきたいすゞは、不採算部門を切り捨てて、得意分野に特化することによって、経営再建に乗り出したのである。

そして、いすゞはアメリカ市場でホンダに小型トラックを提供し、ホンダはいすゞにドマーニの一種をジェミニとして提供するというような提携、乗用車、RV(レクリェーショナぐビークル)での相互OEM(相手先ブランドによる生産)が開始された。

こうした戦線縮小は、軽自動車から高級車までフルラインでそろえ、多品種戦略を進めてきた各社の内部でも車種の削減として進んでいる。「この車種削減に先陣をきったのは業界トップであるトヨタで、最初に手をつけた仕事が、それまで四〇種もあったコロナのバリエーションを約二割削減して三一種にすることだった」(下川浩一『自動車業界からの警告』)づまた車種ごとのモデルーチェンジをのばす動きも始まっている。

さらに一車種あたりの部品の削減、他の車種との部品の共通化も進んでいる。いすゞでは、これまで八〇万点あったトラック全体の部品を急遠ニ万点に削減する計画を立てて実行中であるが、じつは、このニ万点の部品があれば、現在でもいすゞのトラックのうち九八%までは製造できるという。

日産でも全部品の三割が削減できるという(同上吝。ポンプが九三年一〇月に発売した新アコードでは「旧モデルや他の既存車種との共通部品比率ぱ約六割に達した。九二年秋発売の『ドマーニ』以降、五車種で共通化比率が五割を超え、販売台数ベースで全体の四割強になる」(『日本経済新聞』一九九三年一二月一日)。