2015年4月18日土曜日

内憂外患

もともと生物は、環境の中に存在しているものから自分の存続に役立つものを取り入れることと、逆に自分の存続に役に立たないものを環境の中へ排出することとを同時に行なっている。このような流れが乱されれば、生物は直ちに自分の崩壊、すなわち死への道を歩み出す。この流れを乱すものの中に生きている、別の生物もある。この場合、宿主である生物に対してその寄生体としての別の生物が、自分の存続を主張するのが原則である。ここでは、この寄生体としての生物が、私たちの身体の内から出てくる場合と外からの場合との二つを、感染症以外にも範囲をひろげて考えてみたい。

内憂外患という言葉がある。これは、一つの国の国内の問題と外国との折衝あるいは争いを、対にした言い方である。内憂外患は、ともに一つの国のまとまりを崩すものと考えられる。一個の生物の場合、これは病気に相当する。とくに病気の原因が生物である場合を考えてみると、いろいろな感染症や伝染病、臓器移植が外患として考えられる。臓器移植で移植された臓器を悪いものとするのはおかしいようだが、生体のもっている原理からすると、臓器移植のあとに起きる現象は、病原体によって起こされる感染症に似ているのである。悪性腫瘍の場合には患者といい、臓器移植の場合には受容者と表現するように、ともにこれらの患者は宿主とは見なされない。しかし生体は、悪性腫瘍細胞に対しても移植された臓器に対しても、感染を試みる微生物に対するのと類似の対応をする。