2012年5月9日水曜日

施設の老朽化がさらに追い打ちをかける

施設の老朽化がさらに追い打ちをかける。


鉄道で三陸海岸を結ぶという悲願を実現させた国内初の第三セクター鉄道、三陸鉄道が、今月、開業から25周年を迎えた。

利用客の減少による慢性的な赤字や施設の老朽化など、厳しい現実の中、国は支援の条件として地元自治体の支援による経営基盤の確立を求めている。「地域の足」はいま、生き残りをかけたぎりぎりの模索を続けている。

18日午前6時前、三陸鉄道宮古駅で、久慈行きの1番列車の運転士が、リニューアルされたばかりの真新しい制服に身を包み、準備をしていた。「地域に欠かせない存在として努力したい」。午後の記念式典で社員の一人は緊張した表情だった。

25年前、三陸鉄道は「三陸沿岸住民の悲願」だった。だが、利用客は開業初年度の268万8735人をピークに、ほぼずっと減り続けている。07年度は初年度の38.5%にまで減ってしまった。

国鉄が不採算で切り捨てた路線。当初は、5年後から黒字という県の試算を裏切り、初年度から10年間、黒字の順調な滑り出しだった。

しかし、階段を転げ落ちるように乗客が減った。(1)沿線の人口減少(2)急速な乗用車の普及、などが重なって経営は圧迫され、94年度以降は、赤字経営が続き、運営助成基金の取り崩しや県、沿線自治体から財政支援を受けている状態だ。

収支は、経常収入4億2382万円に対し、経常支出は原油高騰による燃料高などから5億9992万円になる見通し。差し引きした経常損失1億7610万円はすべて、岩手県や関係自治体の持ち出しになる。県や自治体の補填(ほてん)額は今後5年で計約8億円になる見込みという厳しい状況だ。

昨年12月に承認された改定経営改善計画によれば、自動列車停止装置(ATS)などの安全性向上整備や、トンネルや橋の劣化や車両の老朽化などへの対策に総額11億5800万円がかかる。